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第71話 四泊五日くらい会えなくても平気だと思っていた

last update publish date: 2026-10-13 21:12:55

第71話 四泊五日くらい会えなくても平気だと思っていた

 陽菜の合宿初日は、朝六時半に届いたメッセージから始まった。

『今から集合。眠い』

 俺はその時まだベッドの中にいて、通知音で目が覚めた。画面を開くと、続けてもう一件来ている。

『でも楽しみ。行ってくるね』

 寝ぼけたまま少し考えてから、

『行ってらっしゃい。怪我だけ気をつけて』

 と返した。

 すぐに既読がつく。

『そこ最初に言うの悠真っぽい』

『頑張って、のほうがよかった?』

『今日はそれでいい』

 最後に笑っているスタンプが一つ届き、それで朝のやり取りは終わった。

 俺はもう一度枕へ顔を戻した。

 四泊五日。

 長いようで、そこまで長くもない。

 以前、一日ほとん

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    第72話 既読がつかないだけで、悪い想像は勝手に増える 陽菜に送った朝のメッセージは、昼を過ぎても既読にならなかった。『おはよう。今日も気をつけて』 たったそれだけの文章が、送信済みのまま画面に残っている。合宿二日目で、朝から練習があることは知っていた。スマートフォンをロッカーか宿舎へ置いている可能性も高いし、昨日だって昼間はほとんど返信がなかったのだから、何も不自然ではない。 頭では、そこまで分かっていた。 それでも午後一時を過ぎた頃、俺は図書館で本を読んでいる途中にスマートフォンを開き、既読がついていないことを確認した。 三十分後、もう一度確認した。 午後二時過ぎにも見た。 三度目になると、自分でもさすがに嫌になった。「見たところで変わらないだろ」 小さく呟いてスマートフォンを伏せる。 昨日の夜、陽菜は「今日もかなり練習する」と言っていた。朝から走って、昼食を取って、また午後練習。その間に連絡が来ないのはむしろ予定通りだ。 だから、何も問題はない。 問題はないはずなのに、午後三時を回ると、頭の中に余計な候補が増え始めた。 転んだ。 脚を痛めた。 熱中症。 体調不良。 スマートフォンをなくした。 充電が切れた。 最後の二つならまだいい。 最初の三つは嫌だった。「勝手に悪い順に並べるなよ」 また独り言が出る。 こういう時、人間の頭はかなり性格が悪い。情報が足りないなら何も考えなければいいのに、空白があると勝手に意味を埋めようとする。しかも、楽しい想像より悪い想像のほうが妙に具体的になる。 陽菜が競技場で倒れているところまで想像しかけて、俺は本を閉じた。

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    第71話 四泊五日くらい会えなくても平気だと思っていた 陽菜の合宿初日は、朝六時半に届いたメッセージから始まった。『今から集合。眠い』 俺はその時まだベッドの中にいて、通知音で目が覚めた。画面を開くと、続けてもう一件来ている。『でも楽しみ。行ってくるね』 寝ぼけたまま少し考えてから、『行ってらっしゃい。怪我だけ気をつけて』 と返した。 すぐに既読がつく。『そこ最初に言うの悠真っぽい』『頑張って、のほうがよかった?』『今日はそれでいい』 最後に笑っているスタンプが一つ届き、それで朝のやり取りは終わった。 俺はもう一度枕へ顔を戻した。 四泊五日。 長いようで、そこまで長くもない。 以前、一日ほとんど連絡を取らずに過ごす実験もした。その時は昼過ぎから多少気になったものの、普通に図書館へ行き、蒼と会い、夜まで生活は成立した。 だから今回も大丈夫だと思っていた。 五日程度なら、別に。 会えないだけだ。 そう思っていたのは、どうやらかなり甘かったらしい。 午前十一時過ぎ、俺は大学の図書館へ向かっていた。 夏休み中なので構内は普段より静かだ。完全に人がいないわけではないが、講義期間中に比べればかなり少ない。 いつも陽菜と待ち合わせる中庭の横を通った時、俺は無意識にベンチを見た。 誰もいない。 当然だ。 陽菜は今、ここから電車で二時間ほど離れた場所にいる。 それだけ。 なのに、妙な感じがした。 普段なら会う約束がなくても、同じ大学のどこかにいることがある。陸上部の練習ならグラウンドか

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    第70話 付き合う前より、今のほうが好きな理由が増えている 雨の日に、昔より今の陽菜のほうが好きだと言った。 あの時は、匂いから昔の記憶が急に戻ってきたせいもあって、かなり素直に口から出た。でも、家に帰ってから考えてみると、あれは思いつきで言ったわけではなかった。 付き合う前より、今のほうが好きな理由が増えている。 次に会ったら、そのことをちゃんと話そうと思っていた。 ところが、いざ会うと、それだけのことを言うタイミングが意外と難しかった。「悠真、そっちの荷物持って」「どれ」「スポーツドリンク入ってる袋。重いやつ」「自分で買ったんだろ」「だから手伝ってほしいの」 夏休み中のフェチ研の活動日。部室へ行く途中、売店で陸上部用の飲み物をまとめ買いした陽菜と会い、そのまま荷物を半分持たされていた。「これ何本ある?」「八本」「一人で持つ量じゃない」「部室の冷蔵庫借りて、あとで陸上部に持ってく」「最初から二回に分ければいいだろ」「それは買ったあと気づいた」「計画性」「今日暑かったから頭回ってなかった」「普段は?」「悠真、喧嘩したい?」 こういうところだ。 昔なら、陽菜に対して「明るい」「陸上部」「汗を気にしている」「声が好きらしい」くらいしか知らなかった。 今は違う。 買い物で少し無茶をする。思いつきで行動して、あとから重いと気づく。負けると機嫌が悪くなる。慰められたくない日がある。一人でいたい日は本当に一人になる。俺が他の女子と話していると少し嫉妬するくせに、自分が嫉妬されるとほんの少し嬉しそうにする。 面倒なところがかなり増えた。

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    第67話 恋人にも、一人でいたい日はある 陽菜から届いた。『ごめん。今日は一人でいたい』 というメッセージを見て。 俺は。 少し固まった。 夏休みに入って。 陽菜は。 ずっと忙しい。 部活。 友達。 家族。 そこは。 もう理解したつもりだった。 でも。 今日。 完全オフ。 予定なし。 なのに。 会わない。「……」 スマートフォンを見る。 返信。 何を書く。『分かった』 だけでいい。 多分。 でも。 指が止まる。 分かった。 本当に? 頭では。 分かる。 疲れている。 一人でいたい。 それだけ。 でも。 感情。 少し。 違う。『俺には会いたくない?』 打つ。 見る。 かなり嫌な聞き方。 消す。『何かあった?』 これも。 今一人でいたいと言っている相手へ。 説明を要求してる感じ。 消す。 最終的に。『分かった。ゆっくり休んで』

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